第9話・じゅんいちダビッドソンの❝自らを追い込んで得たもの❞
今回は…じゅんいちダビッドソンのちょっとイー話♪
じゅんいちと私の関係は…遡ると17、8年前に遡ります。
当時彼はピン芸人ではなく、ミスマッチグルメっという漫才コンビで活動をしておりました。
お互い芸事では全く食えない時期だった訳ですが、ある時、じゅんいちからこんな相談を受けました。
「木曽さぁん、バイト紹介してくれませぇん?」
その当時、私は深夜のコールセンターでバイトをしておりました。
日中、いつ芸事の仕事が入っても対応出来るように夜勤のバイトを選ぶ…これは若手芸人にとってよくあること。
じゅんいちも深夜のバイトを探していたんですね。
何度か紹介したことがありますが、そのコールセンターのバイトには沢山の芸人がおりまして。
中にはその後ブレイクした芸人も…ナイツ塙、バイきんぐ西村も一緒にバイトしていた仲間です。
そんな“芸人バイトサークル”にじゅんいちが加わりました。
とても大変な時期でしたが…本意ではないバイトでありながら、バイト中に芸事の相談をしたり、ネタを一緒に考えたり…バイトの時間も悪くなかったなぁ、と思い返すと感慨深いものがあります。
そういやじゅんいちが本田圭佑選手をモチーフにしたネタをやるようになったのも…このバイトでの何気ない一言がきっかけだったそうで。
同じくバイト仲間だった漫才コンビ・風藤松原(このコンビもフジテレビ『THE MANZAI』のファイナリスト)の風藤くんが…
「じゅんいちさんって本田に似てますよね」
…と言われ、そこをヒントにしたネタを考えたのが…今のキャラが生まれるキッカケになったんだそうです。
この時、私は既にバイトを辞めていたんですが…。
バイトの辞め時、これが実に難しい。
長年、芸事とセットで考えるのが当たり前になってしまいがちなバイト。
しかしながら私やじゅんいちが籍を置いていたバイトは…それが間違いであることを気付かせてくれました。
ナイツ塙がバイトを辞めたのが…2008年。
春にフジテレビがやっていた『お笑いホープ大賞』というコンテストがありまして、ナイツが優勝したんです。
そのタイミングだったと思うんですが…塙から相談がありまして。
「辞めようと思うんですが」
…芸事で身を立てられるようになる、素晴らしいことです。
ちなみに私がバイトを辞めたのは…2010年。
いや、厳密には2011年やったかなぁ。
2010年からバイトに行かなくなったんですが…籍だけは残してて、いつでも戻れるように契約更新をして貰ってました…セコいねぇ、私(^^;)
そして本日の主役。
じゅんいちがバイトを辞めたのが…2014年。
この2014年は…じゅんいちが『R-1ぐらんぷり』で初めて決勝進出を果たした年。
じゅんいちが決勝進出を決めた時、私は祝福の電話を掛けました。
実はこの時、他のコールセンター芸人の仲間から或る報告を貰ってました。
その報告とは…コールセンターのバイトが閉鎖になる、閉鎖後は日中の別のコールセンターに移動になるか、はたまた辞めるかの二者択一を迫られていると。
じゅんいちともその話になりました。
「僕ねぇ、思い切って辞めたろうと思ってるんですよぉ」
…この悩みは私にも痛いほど分かる。
芸能界、その先を予見することは不可能に近く…生活をしていく上で“バイトを切る”という決断は死活問題になり得るのです。
「食えるようになるか分からないですケド」
そうは言いつつ、勿論その電話の向こうの声は…〔これで一発当てたろう!〕という気概に満ち溢れてました。
そして『R-1ぐらんぷり2014』。
じゅんいちは優勝することなく、いや、そうは言っても『R-1』R-1で決勝にあがるなんてとんでもなく凄いことなんですが…バイトを辞めることになりました。
勿論『R-1』の決勝に進出したんですから、仕事量は増えたことは間違いではありません。
しかしながら(これは推測の域を出ないですが)…恐らく一気に優雅な暮らし出来るような状況ではなかったんじゃないでしょうか?
お笑いのコンテストで決勝にあがったからといって、それが即、華やかな生活
を送れるようになる訳ではなく…むしろバイト生活の続行を余儀なくされるケースは少なくありません。
とても難しいことなんです、芸事だけで飯を食っていくということは。。。
そこから1年、『R-1ぐらんぷり2015』において2年連続の決勝進出を決めたじゅんいち。
そこで見事、チャンピオンの栄光に輝いたのでありました!!
私は思うのです、もしその1年前…じゅんいちがバイトを辞めていなかったとしたら、果たして“R-1ぐらんぷりチャンピオン”の称号を手にすることが出来ていたのか?
芸人の中でよく言われる、こんな話があります。
“自分の身の丈より高めの家賃の部屋に住んだ方が良い”。
これはどういうことかと言いますと…自分の稼ぎの割に少し高めの家賃の部屋に住むことで、頑張らないと払って行けない環境に身を置くことになるので…自然と追い込まれ、仕事に対する熱量があがる、という意味でして。
じゅんいちはそれをもっと突き詰めた状況に自らを追い込んだのです。
バイトを絶つ→退路を断つ→芸事で食ってやるという不退転の決意。
覚悟ですね、勝負に勝たなければならないというメンタリティー。
彼がR-1チャンピオンに輝いた理由は、彼の才能、努力、そして火事場のクソ力の結晶なんじゃないかと思っております。
そしてこれは…去年の秋、じゅんいち、私に同じく芸人仲間の井上マーくん、さらば青春の光の森田くんの4人で行った釣りの時の1枚。
こないだは私がやっているトークライブにも来てくれました。
彼は仲間を大切にするナイスガイ(死語か)であることも書き添えておきたいと思います。